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Channel: JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)
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「SUCK」

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「SUCK」2009年 カナダ 監督:ロブ・ステファニューク

鳴かず飛ばずのカナダのインディーズバンド「ウィナーズ」。マンネリ化したいつものライブ後、ベース担当のジェニファーはとうとうバンドに愛想を尽かし、薄気味悪い男と一緒に消えてしまった。翌日、姿を現した彼女はまるで別人!?のように様子が変わっていた。目の色や外見だけでなく、メンバーも驚くほどの演奏力や魔力的なカリスマ性を備えて。なんとジェニファーは一晩でヴァンパイアになっていた!!
メンバーは困惑するものの、ジェニファーが放つ妖艶な魅力でバンドは人気急上昇。カナダを越えてアメリカツアーも大成功。もっともっとBIGになるためには俺たちもヴァンパイアになるしかない!とメンバーは次々とヴァンパイアに。しかし、ヴァンパイア・ハンターのヴァン・ヘルシングが彼らを追いかけていた・・・。

アリス・クーパー、イギー・ポップが重要な役で出演。ヴァン・ヘルシングには「時計じかけのオレンジ」のマルコム・マクダウェルと、話題性に事欠かないホラー映画って事で公開を楽しみにしてたんだが・・・失敗した。レイト・ショー前の腹ごしらえが災いして瞼が重く、鑑賞どころではなくなっちゃたい。

とにかく緩いホラーで、残酷シーンはなるべく映さないように作られている。勿論、血もバラバラ死体も出るけれど、悲鳴のあとに場面が変わって、もうヴァンパイヤが死体を貪っているといった塩梅。
グルーピーを1名、餌食にしていましたけど、観客に対して大殺戮がくり広げられたり、ライブハウスがパニックになったりする事はありません。
これはホラー映画というよりロック映画としての要素を楽しむ作品ですね。

ウィーナーズの曲(監督・リーダー役出演のロブ・ステファニュークが作曲)も思いのほかポップで聴きやすい。PVのように楽曲を楽しめるシーンも多い。もっとヘビメタ、パンクっぽいものを想像していました・・・。

小ネタもかなり散りばめられていたようだが、途切れ途切れで意識が飛ぶのでほとんど認識できず。
往年の名盤ジャケットを再現するシーンがロック親父にサービス満点。

「旅の恥はかき捨て」と言って次々にメンバーがヴァンパイヤになっていく。
どんどんグラムロックなメイクになって行くけれど、あれはメイクじゃなくて地の顔色なんだね。

ベースのジェニファー(ジェイシカ・パレ)のメイク(地の顔色だってば!)のエスカレートしていく様も楽しい。

プロデューサー役のイギー・ポップ(長い顔に渋さが増して、益々怪しい)はメンバーに大人の忠告をしていたようだけど詳細は認識できず・・・

3月末にはレンタル開始のようだから、借りてサラッと再確認してみようか。
なんだか憎めない楽しい映画だったような気がするもんで・・・

渋谷 シアターN

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「痴漢電車  とろける夢タッチ 」

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「痴漢電車 とろける夢タッチ」2010年 オーピー映画 監督:竹洞哲也

満員電車で痴漢する男の指使いに女達は次々に潮を吹き昇りつめる。探偵事務所の浮気調査専門女探偵・香(かすみ果穂)。ある日、丈二から失踪した妻・あゆみ(山口真理)の捜索依頼を受ける。痴漢に遭ったあゆみは、指技が後遺症となり夫とのセックスは上の空だったという。調査に乗り出そうとする香はライバル探偵の知世(和葉みれい)と鉢合わせ。実は丈二は一社では不安だと知世の事務所にも依頼していたのだ。香と知世は両社のプライドを賭け依頼を遂行。香はあゆみの失踪の因は痴漢にあると踏み囮作戦を決行するが…。


お正月公開作品だし、今やピンク映画になくてはならない存在とも云えるかすみ果穂主演の竹洞組コメディというので上野に見に行ったのだが、当日、急用が入って上映直前に退館してしまった。
その後、新宿での公開があったので再チャレンジ。
昔から大看板を眺めていたこの劇場に入るのは今回が初めて。今や、その大看板も白紙状態(広告募集中)これがピンク映画界の実情なんでしょうね。

それはさておき、映画の方。

かすみ果穂のコメディはあまりにもおバカ、お下劣。下ネタ・オンパレード。
和葉みれいの顔に放屁するは、土鍋にビチグソ残すは・・・。

ギャグとして飛びまくってくれるのは2人の電車内囮合戦。
いきなりビキニで吊革に掴まるかすみ果穂にスク水で対抗する和葉みれい。
対抗心はエスカレートしていき、かすみ果穂はついに車内でジョリジョリと剃毛をおっ始める。
吊革に掴まった2人の腕に手錠が掛けられたのは言うまでもなし。

長身の和葉みれいとのデコボコ・コンビはちんちくりんに見えてしまうかすみ果穂には不利か。

エロ路線の主戦は失踪妻の山口真理にあり。
なんとも卑猥なボディをしていらっしゃる。

岡田智宏が謎のエスパー探偵でカッコ良く、美味しいところを持っていっちゃう。

痴漢とカンフーを合わせたチカンフーなど小ネタもふんだんではあるけれど・・・
この手のコメディは上野や新宿の成人館では不利なんじゃないか。
ある程度、観客の乗りでもって、助けられると良い雰囲気で笑いも誘発されるというものだ。必ずしも映画鑑賞が目的とは限らないガラガラの観客席からはクスリとも笑いがおきず、白けた空気が漂うばかりで寂しい。

この作品、実は「人妻探偵 尻軽セックス事件簿」という作品の続編らしい。エンディングでは次回作のタイトルへと続く告知もあったり。

わざわざ、新宿で再チャレンジするほどの事も無かったかな。まぁ、いいか。

新宿国際劇場

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「雪夫人絵図」

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「文豪と女優とエロスの風景」

「雪夫人絵図」1950年 新東宝 監督:溝口健二

雪夫人は、旧華族信濃家の一粒種のお姫様に育ち、養子直之を迎えて結婚したが、直之は放蕩無頼、雪夫人を愛しながらもこれに飽き足らず夫人を熱海の別荘においたまま、京都のキャバレーの女綾子に溺れ、いたずらに財産を蕩尽している。直之に別れ話を持ち出す度にその暴虐な肉欲の嵐に征服されてしまう弱い雪夫人は、心と肉体の矛盾にただ身悶えして悩むばかり・・・。

内容的にはポルノの題材にうってつけな雪夫人を溝口監督が濡れ場らしい濡れ場を使わず、小道具と木暮実千代の官能的な演技だけで見せようというもの。
こういう禁欲的時代のエロティシズムにはしばしば驚かされてきたが、これはいかにも厳しかった。悲しい女の性といってもあまりに古風で共感が持てないし、テンポもゆったりしていて退屈しかかる。

佐久間良子でもリメイクされているようだけれど、そちらも期待できそうにない。
文芸ピンクで取り上げればあんなことこんなことやりたい放題できそう。久我美子の役柄なんかは生きるんじゃないの。・・・やっぱり古臭いかな。

上原健が雪夫人に「逃げてはだめです。強くなりなさい。」と励ます会話のシーンなどは古典的芝居として鑑賞するとなかなか良いかも。
木暮実千代の着物から溢れる官能の美しさと裏腹な女性の弱さがもっとも生きるお芝居。

しかし、救世主かとも思われた逃げ腰、上原謙のダメっぷりは想像以上で、へべれけになって談判に来る段であえなく撃沈。これは笑える。
一方、細身ではあるものの年齢不詳の怪オヤジである山村聡の悪党ぶりが痛快で痺れます。直之に本性を現すタイミングもナイス。

一生懸命雪夫人の味方になろうとする浦部粂子。女中の鏡。

朝霧たちこめる芦ノ湖畔ホテルの俯瞰ショットは流石に美しい。

神保町シアター

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「ヒマラヤ無宿 心臓破りの野郎ども」

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「妄執、異形の人々?」

「ヒマラヤ無宿 心臓破りの野郎ども」1961年 新東映 監督:小沢茂弘

ヒマラヤで探検隊が次々に襲われた。その犯人とされるヒマラヤの雪男を土門博士が捕まえて帰国するというから、さあ大変!学者や国際警察、はてはギャング団まで東京に集結し…。“ボリショイの熊”“ヨッチー・三谷”などの出鱈目なネーミング・センスに加え、なぜか雪男コンテストに出場した土門博士が胸毛審査で圧勝する、という展開にもビックリの冒険活劇!?

前回の妄執、異形特集で見た「アマゾン無宿」がぶったまげるほどの衝撃のカルト映画だったので、こちらも楽しみにしていた。
意味不明な点においてアマゾン無宿より、なお強烈な1本。

今回も片岡千恵蔵と進藤栄太郎がとても嬉しそうに演じていて、思わず笑みがこぼれる。(面白いというより、微笑ましいという感じ)
千恵蔵が土門博士、進藤栄太郎がボリショイの熊三。
特にキャバレーでのボリショイの熊三、雪男ショーでの乗りが素晴らしい。ジーナ(筑波久子)との美女と野獣。

国際司法刑事、ヨッチー・三谷の水谷良重が、またよろしい。
以前、何かの映画で見た時も思いましたが、この頃の水谷良重はぽっちゃりとふくよかな顔立ちでありながら男勝り。これが良いんですね。

帰国した土門博士一行の山男たちが土門邸で鍋を突きながら歌っている宴席シーンを始め珍妙な場面の連続。
雪男コンテストの土門博士出場などは、もう理解しようとするのも無駄。
コンテスト審査員には久保菜穂子、山東昭子、三田佳子など東映女優が実名出演。

雪男評論家、堺駿二が珍解説をしてくれます。

雪男の特ダネを狙っている記者が土門博士の妹(佐久間良子)とその恋人(江原真二郎)

本物の雪男はアンドレ・ザ・ジャイアントを小粒にした感じの大男。
調べてみると元相撲取り、プロレスラーの羅生門綱五郎。もちろんG・馬場ではない。黒沢「用心棒」に出ているんですね。

でも、この雪男は、悪役の大竹社長(山形勲)、チャン博士(三島雅夫)らにヒマラヤのウラニュウム目当てで一族を皆殺しにされた、単なる少数民族の生き残りだったのでした。

お決まりのドンパチ銃撃戦を経て・・・
復讐の鬼と化し暴れるまくる雪男でありましたが、土門博士に宥められヒマラヤに帰っていく事になります。
ダーダ、イポカルチョ

飛行機で帰っていく雪男を見送りながら佐久間良子、
「結局、雪男って、人間だったのね」・・・・オイオイ!

「アマゾン無宿」の方がいくらかまともだったように感じるのだから、すごいね、この映画。

残念ながら無宿シリーズは2本のみのようだけれど、千恵蔵、進藤栄太郎コンビは地獄の名のつくシリーズもあるようなので、見てみたい。

シネマヴェーラ渋谷

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「奇跡の海」

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「トーキョー ノーザンライツ フェスティバル 2011」

「奇跡の海」1996年 デンマーク 監督:ラース・フォン・トリアー
原題:Breaking the Waves

プロテスタント信仰が強いスコットランドの村に住む女性ベスは、油田基地で働くよそ者のヤンと愛し合い結婚する。だが、ある日起きた大事故で、ヤンは半身不随になってしまう。朦朧とする意識の中でヤンはベスに、他の男たちと寝るよう強要し、信仰に篤いベスもまた、夫を深く愛するがゆえに、見知らぬ男たちと関係を持ち始めるのだったが…。

ラース・フォン・トリアーの作品はこれが初めてです。
無神論者の日本人、この信仰の物語にどっぷりと浸かる2時間40分。
スコットランドの殺風景な中に美しさのある景色と、精神を病んだことのある女性ベスを演じたエミール・ワトソンの演技にぐいぐい引き込まれてしまいました。

半身不随で妻を喜ばせる事ができなくなった夫が他の男と寝ることを強要し、その情事の話を聞く事のみに生きる力を得るという物語。信仰という視点が無くてもポルノドラマとしては成立しそうな内容。そこに信仰を持ってきた事によって、物語がより重々しさを増していく・・・。

そこに細かい章立ての構成、各章冒頭のCG処理された美しい風景と60年代、70年代の馴染み深いロック・ミュージックによるインターバル。
これが、物語の重々しさから、ふと息継ぎをさせてもらうような効果がある。
なぜ、監督が60〜70年代のロックを選んだのか、知る由も無いが、私の世代にとっては誠に救いになったのは事実。

ところで、昨年見た「愛のむきだし」で父親のために罪を重ねるユウの姿とベスの行為が重なる部分がありますね。この作家の影響があるのでしょうか。
純粋なる者の信仰とはそういうものなのか。怖ろしさの中に尊いものを感じたり、複雑な気持ちにさせられます。

ひとつの愛の物語としてベスの愛、ヤンの愛に不覚にも感動していると・・・
治癒するはずもなかった、ヤンが回復するという陳腐な奇跡的展開に落胆させておいて、実は本当の意味での奇跡がエンディングに鳴り響く、この巧みさ。
確かにちゃんと伏線も踏んでいましたし・・・。
ラブ・ストーリーの中に宗教心や神という視点を入れてこそ、生きるラストに感服。
鑑賞後はそれまでの重々しさから開放され爽快感すら味わう事に。
べスとヤンがあの鐘の音で報われたわけではないと思うのですが、何かそのようなものを超越した存在を意識することができます。

エミリー・ワトソンは年齢不詳気味の小じわがとても可愛らしく、新婚から処女喪失、愛欲に溺れていく過程。精神の不安定さを熱演。
彼女のための作品とも言える素晴らしい演技でした。

その影で助演である義姉ドドのカトリン・カートリッジの好演も光ります。
夫を亡くしているドドはベスに対して常識的に振る舞いますが、徐々に心理面に変化が見られます。ベスの死に向かい合った号泣シーンが印象的。
そして、最後には、女の発言を許されない教会に対して発言に及ぶんですね。

やはり、この映画には章立てのインターバルが重要に感じます。
60年代から70年代のロック。
懐かしい気持ちで聞き取れたのは・・・

All the Way From Memphis/Mott the Hoople 第1章 ベスの結婚
ジェスロタルの曲(題名は思い出せず、調査の結果「Cross Eyed Mary」)第3章 独りの生活
青い影 Writer Shade of Pale/Procul Harum 第4章 ヤンの病気
Goodbye Yellow Bric Road/Elton John 第6章 信仰
Child in Time/Deep Purple 第7章 ベスの犠牲
デビット・ボウイの歌(題名は思い出せず、調査の結果「火星の生活 Life on Mars」)エピローグ 葬儀

不明だった曲も調査の結果判明いたしました。
In a Broken dream/Python Lee Jackson,Rod Stewart 第2章 ヤンとの生活
Suzanne/Leonard Cohen 第5章 疑惑

その他、劇中で使用
Virginia Plain/Roxy Music(こういう使われ方が似合う曲です)※
Hot Love/T・Rex・・・etc...

ラース・フォン・トリアーの新作が日本でも公開。「アンチ・クライスト」
また、宗教的内容のようですが、私はエログロ目当てで見る予定。それなりの覚悟をして・・・

O・アサイヤス「冷たい水」でも似たような使い方されていましたね。

渋谷 ユーロスペース

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「牛乳王子」

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「MOOSIC+TRASH UP!!」

「牛乳王子」2008年 映画美学校 監督:内藤瑛亮

世界中のホラーマニアを熱狂させた短編。老け顔の中学生・加藤真が自殺する。想いを寄せる同級生・安藤舞の前で痴態を晒してしまったか らである。彼の情念は殺人鬼・牛乳王子を生む。ボンクラ男子の純愛をスラッシャー映画の方法論で誠実に語ったラブストーリー。

15分の短編。
新たな若き才能・・・。

どの中学でも牛乳の介在したスラプスティックなシーンて必ずあったもんな。
牛乳臭さが思い出される。
中学生、楽しそうで良い。懐かしいなぁ。
牛乳王子に殺された女子たちがゾンビ化して廊下でダンスするシーンがさいこお!

温まる短編。

池袋 シネマ・ロサ

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「ファッション・ヘル」

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「MOOSIC+TRASH UP!!」

「ファッション・ヘル」2010年 クロックワークス 監督:継田淳

草野球の試合の帰り、さんざん酒を飲んだ中津・宇野・土信田の3人は、中津の残り少ない独身生活の記念としてたまたま見つけたファッション・ヘルスに入店する。風俗経験がなかった中津は恋人の美沙に対して後ろめたい気持ちがあり帰ろうとするが、反対に宇野はセーラー服のノノコを、土信田は巫女の恰好をしたカオリを指名し、それぞれのプレイルームへ入るが…。

ファッション・ヘルスの「ス」を×で消去してファッション・ヘル(いちいち解説するほどの事でもなかったね

低予算でよくぞやってくれました。
残酷効果はあの西村映像だけど、あまりお金を掛けられてはいないよう。
それでもスプラッターとして完成度が高く満足できる仕上がり。

ここでも亜紗美、が稀有な存在として素晴らしいです。
この人が居なかったら日本スプラッター・アクション映画の世界はまったく違ったものになっていたに違いない。
倉庫でのロケの間中、殺陣の練習をし続けている、そんなプロ根性だ。(上映後のトークショー情報)
べらんめぇから甘え声まで、完璧ですぜ。

原紗央莉だって負けていない。ナギサはサロンSHOGUNでは新人で仕事に慣れていないようだったけど、その本性は定かじゃない。お涙頂戴の身の上話があるけどどこまで本当か?

3人の男性客は草野球仲間。そのうち中津(石川ゆうや)は結婚間近でフィアンセから野球を辞めるように言われている。目的もなく生きてきたが、フィアンセと出会い、生きる意味を見出した中津は厳しいフィアンセの締付けに甘んじようとしている。ファッションヘルスだって初体験だし、フィアンセも潔癖症だからバレたら大変。ひょっとするとまさか童貞の疑いまで。

そんな中津が瀕死の状況でナギサに新妻への愛のメッセージを託そうとしたが、ナギサは・・・・
ここで場内大爆笑!上手い!

原紗央莉が血にまみれて仁王立ち。その女子プロレスラー並みの迫力ボディが絵になる。
この人こそサーカスの女怪力としてバトルさせたい!

鈴木ミントの巫女姿カオリの淫猥ダンスもオッケー。

宇野(柳東史)の反撃に???・・・空手の達人だったそうです。
チ○コ切られた状態から見せる男気に「牛乳王子」の監督も痺れたって(上映後トークショー情報)

池袋 シネマ・ロサ

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元ドラゴンズ監督 与那嶺要氏

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<与那嶺要さん死去>数々の衝撃プレー 日系2世、球界近代化に貢献

セ・リーグ暗黒時代、水原監督から引き継ぎ、憎っくき巨人のV10を阻んだ名将ですね。
当時は中日ファンでした(横浜ファンに変更したのは1976頃)から優勝の瞬間はラジオを録音しながら、感動したのを今でも思い出します。
残念ながら現役時代のプレーには間に合ってません。

僕もあなたも願ってる
祈る気持ちで待っている
それはひと言優勝だ
与那嶺監督の胴上げだ
がんばれがんばれドラゴンズ
燃えよドラゴンズ!!
がんばれ! がんばれ!
ドラゴンズ!
燃えよドラゴンズ!!

「燃えよドラゴンズ」8番 唄・板東英二

今回の訃報に寄せて、王貞治氏も回顧していますが、
「子供の頃、与那嶺さんからサインをもらった」というエピソードは何かのCMで使われていたと思います。

後楽園のスタンドから、「王さんだけじゃなくてボクにもサインちょだ〜い」と声援をしたことを思い出しました。

ご冥福をお祈りいたします。

「燃えつきた地図」

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「昭和の銀幕に輝くヒロイン〔第57弾〕中村玉緒」

「燃えつきた地図」1968年 勝プロダクション 監督:勅使河原宏

興信所の調査員の男は、ある女から失踪した夫の行方動向の調査を依頼されたが、女は夫を探すのには熱心ではなく男に協力的でなかった。男はまず失踪者が残していった運転手募集広告、喫茶店「つばき」の電話番号を手掛りに調査を始めるが調査は、はかばかしくなく、何の結果も得られなかった。そんな時、男は女の弟と名乗るやくざ風の男に会った。弟は失踪者の日記を見せるといって・・・。

粟津潔の抽象画をバックに英語タイトルとローマ字のキャスト・スタッフ・スーパー。
奇異な編集、カット割を使いながら安部公房の世界を再現しようとする。
脚本は安部公房自身なので、ほぼ忠実。ただ小説技法のマジックと違って映像マジックでは限界があるのか、原作では不条理性ゆえに許容できた行き当たりばったり感が映画だととても気になる。

原作で重要な位置を占める坂道について、勅使河原監督が選んだロケ地は我等が地元団地。
確かにあの頃はモデル団地としてロケが多かった。
勝新太郎がスバルで駆け上がる坂道は、かなり以前から車両通行はできなっている。登りきったところにあった交番も当時は健在。スターハウスの側道の八重桜並木、くらげ公園、動物公園付近の棟屋を見ることができる。現在第2期まで完了した建替工事だが、今もなお残る地区が使われていて、燃えつきた(取り壊された)団地がうまく確認できないのは惜しい(遠景に21号棟が見えたような気もする)

原作では弟が死んでしまうまでの前半が良かったが、映画では後半、田代を演じる渥美清が光る。相手にしてない勝新太郎と堅物むっつりの虚言癖男の渥美のやりとりが愉快。
河原の暴動からスタコラ逃げ出したり、運転手たちにボコボコにされても無抵抗と、どうも勝新にしては弱腰の役柄でしたが、この田代をあしらう場面のニヒルさは面目。
「男はつらいよ」を見てない自分にとって渥美清は「泣いてたまるか」の人。寅さん以外の役での輝きを見るにつけ名優の認識を新たにしますな。

そして原作で、もっとも魅力的な場面として印象的だった、探偵が別居中の妻と会う場面。
映画では中村玉緒が煙草をふかしながら、実にどうも格好良い。

この一面だけでも原作の魅力を再現したとして評価できましょう。

ラストでは勝新太郎が道路でペシャンコになった猫の死骸に語りかけて終わる。
あぁ!勝新、やってもうた!という感じのエンディングに失笑。

ラピュタ阿佐ヶ谷

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「砂の上の植物群」

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「文豪と女優とエロスの風景」

「砂の上の植物群」1964年 日活 監督:中平康

化粧品セールスマンの伊木は、ある晩、横浜のマリンタワーの展望台で、真っ赤な口紅を塗った女子高生の明子と出会い、彼女に誘われて一夜を共にするが、意外にも相手はそれが初体験だった。後日再会した彼女は、親代わりに自分を厳しくしつけて育てた姉が、実は昼日中から男とホテルに入り浸っていて憎い、と伊木に打ち明け、彼女を誘惑して、ひどい目に遭わせて、と彼に頼みこむ。かくして伊木は、明子の姉の京子と出会うが……。

吉行淳之介は学生の頃に純文学に付け、エンターテイメントに付け、インテリ風エロ話が気に入って随分読みました。この原作も読んでいますけど、ほとんど憶えてません。

今読むととストーリーというかエロティシズムは最早、古めかしい感じがするかもしれない。ところがこの中平康の映画の手法に限って言うと古めかしくさを感じない魅力がある。モノクロにパウル・クレーの絵をパートカラーで扱ったり、バッハの曲に乗せ、アップを多用したモノクロの陰影で仲谷昇が厭らしく女に迫る。
女を誘う仲谷昇を見ていて、旧友の女誑しを思い出した。かつてはこの手が通用していたのね。

モノクロの女の肌は相変わらず息を飲む美しさを表出するが、京子(稲野和子)の縄目の跡がさらに効果的。

作家の花田(高橋昌也)と友人の井村(小池朝雄)の3人でしゃべるエロ話。アカシロのブルドッグの話なんてのは吉行淳之介らしくて良い。

バー「鉄の槌」の京子が伊木に手渡す、走り書きの手紙なんてのも吉行ブンガク的で堪らん。

明子役の当時新人・西尾三枝子もセーラー服で頑張っていますし、稲野和子の媚び媚びの演技も艶めかしい。しかし、実を言うとその上を行くのが、父との間を疑われている妻(島崎雪子)なんじゃないかと思う。濡れ場はないけど充分エロい。

女の食事場面もエロティックに描かれる。
小魚をむしゃむしゃ食べる女房(島崎雪子)
「こういうところは慣れてない」とレストランで食事をする京子(稲野和子)の口中。

このレストランシーン以降のシュールさがまた悪くない。
閑散としていたはずのレストランが急に盛況となって大勢の客の食器の音が充満。
混雑するホテルの廊下を人々の流れに逆らってエレベーターに向かう伊木と京子。
エレベーター内で意味深に見つめあう2人。扉が開く度に乗り込んだ階以外の閑散とした客室廊下の連続。

ところで父親の呪縛からの妄想か、京子との仲を近親相姦かと思い込む伊木だけれど、それはあまりにも思い込み過ぎでしょ。

神保町シアター

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「パンツの穴 キラキラ星みつけた!」

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「MOOSIC LAB」MOOSIC+メランコフ

「パンツの穴 キラキラ星みつけた!」1990年 フィルム・キッズ 監督:鎮西尚一

父親の再婚を素直に喜べないしおりは、その気分を紛らわすかのようにテニス部の合宿で、信州・諏訪湖にやって来る。そんなしおりに一目惚れした宿屋の息子・順平は彼女にアタックするが、しおりの義母がそこに現れて……。

学研パブリッシング発行の月刊雑誌BOMBの中の1コーナーを原案とした映画シリーズ「パンツの穴」は菊池桃子の第1作公開時から、まったく自分には縁のないちょっとエッチなアイドル映画という認識しかなかたのです。しかし、ポレポレ東中野のR18 SHOWCASEの鎮西監督特集でも上映されていて、紹介文からちょっと興味を抱いたものです。その時はスケジュールが合わず鑑賞に至らなかったのでもう観る事はないだろうと思っていた。
でも、ちゃんとまた上映機会に遭遇するんだね。

しかし、何とも形容しがたい魅力にあふれたへんてこりんな作品。まさにジャンルという枠組みに入らないというか、今となっては公開の意図すら不明と思える(上映後トークショーでいまおか監督も申してました)アイドル映画?青春ミュージカル?

夏休みの避暑地、実家の旅館に合宿に来た女子高生との出会いと恋愛。
まったく自分の高校生活には縁の無い憧れのボーイ・ミーツ・ガール物語。
良いなぁ、高校生の恋って。自分もこんな体験の10分の1でもあったなら、もうちっとまともな人間になれてたかな。否、既にまともじゃなかったから縁が無かっただけか。

旅館の息子順平とヒロインのしおり。その友人の恒雄と薫の4人の淡々とした恋愛物語と並行して描かれる街のちょっと変わった人たちの奇行。
武田信玄のお宝を探し求める老猟師。歌好きのお兄さん。
いや、合宿に来る女子高生の方だって充分おかしな人がいる。新興宗教さながらの予言をする女子。
引率教師は何かと管理することに否定的で、東京から追ってきた女ともめている。
果ては旅館を廃業して売る決心をする順平の父親。しおりを連れ戻しにくる父親の再婚相手のクラブ歌手と・・・彼等の人生を大きく左右する出来事も進行する奇妙な構成。

この特色あるキャラクターを演じるキャストが皆、とても魅力的。
まず歌のお兄さん加藤賢崇の怪人ぶりが目を引く。へんてこな歌を飄々と歌う加藤賢崇、ドレミファ娘の時もそうでしたが怪しすぎます。
「恥ずかしくってやってられない」という浅野忠信君を諭す大人の賢崇君(上映後トークショーより)

怪人という意味では大御所の天本英世。もうこの頃は完全な老人なんですが、元気いっぱいで健在ぶりで猟銃を盲滅法、撃ち放つ。

しおりの父の再婚相手、広田レオナのむんとするフェロモン。
クラブ歌手が旅館に押し掛けた時は洞窟内で猟銃をぶっ放したことが元で死んでしまった天本英世の葬儀の最中。気だるく口ずさむ「ダニー・ボーイ」にいつしか皆が大合唱になる名シーン。
他のバッチもんナツメロとはここだけちょいと違う。もちろん「銀座ジャングル娘」などバッチもんぽいメロディー(西野妙子がバケット車で2階欄干で踊る同級生の高さまで上がり歌い踊る場面も印象的)のノスタルジックな雰囲気も悪くないです。

教師を追っかけてくる女がポルノ女優、杉原光輪子。加藤善博と痴話喧嘩を繰り返し、ヌードシーンまであり。

旅館の息子順平役、毛利賢一はジョニー大倉の息子ですって。あの当時の髪方は仕方ないにして、可愛くもしっかりとした男の子。
その友人が浅野忠信(本作がデビュー作)トークショーで鎮西監督が「あの当時からカッコ良かった」と連発していましたが、映画からはそんな感じは受けません。カッコ良いというか可愛い?・・・って言うか子供じゃんか! 頬を赤くした、まさに紅顔の美少年。

しかし、この映画を最も印象深く魅力的にしているのは、何と言っても西野妙子の可愛さです。
鑑賞中、何度心の中で「うわ、かわいぃ〜」と賛嘆したことか。たいして可愛くない普通の女子高生の表情から一瞬にして天使のような可愛さに豹変する瞬間が堪りません。
思わせぶりな言動の多い罪な娘ですけど・・・。

小室哲也プロデュースのDOSでも活躍していましたが、今はどうしているのでしょう。まだまだ若い方です。もう一度復活して欲しいですね。

浅野忠信のお相手になった遠藤美佐子という娘も、良い雰囲気で若い恋心を演じていましたし、女子高生の中で唯一彼氏のいるリーダー役、華井すずみも笑窪の可愛い娘でした。

まだギャルなんて呼ばれていないあの頃の女子高生。映画の中だけの幻影でしょうか。

池袋シネマロサ

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「老人とラブドール 私が初潮になった時」

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「老人とラブドール 私が初潮になった時」2009年 エクセス 監督:友松直之

夜の街を歩く女が薄暗い路地で突然ロボット犬に襲われ犯される。警察署では指揮官の友梨をはじめ刑事たちが事件の真相を探っていた。どこのロボットメーカーも自社アンドロイドが犯罪に関わることはないと主張する。そんな中、郊外に住む老人・上野がメイドアンドリドのマリアの身体を拭いていた。マリアは上野の元で60年余り勤めて来たが、バッテリー不良のため機能がすべて停止していた。上野は壊れたバッテリーを今でも探し続けていた・・・。


2作目の「私大人のオモチャ止めました」を先に観ちゃったけど、こちらが1作目。違う話なので順番は気にする必要なし。
2作目を堪能したのでこちらはDVDの「AI(アイ)高感度センサー搭載 メイドロイド」で鑑賞しようと思っていたところに池袋でかかったのは嬉しい限り。

2作目のノリノリ感とはちょっと違ったSF純愛ラブストーリー、傑作!
最近、ピンク映画のハートウォーミング展開に辟易していたけれど、これは素直に入れて感動できる。本物かもしれない。
監督はマドンナメイトから「私大人のオモチャ止めました」を小説化、読んでみたいと思っているのだが、こちらの作品も小説化してくれないのかしら。

人造少女 初めての淫乱ご奉仕 (マドンナメイト文庫)

老人、野上正義の純粋なる愛の物語はそれだけで心洗われる傑作だけれど、それだけにとどまらず、並行して描かれる世界が面白い。

機能停止したマリアに語りかける上野での背後かかっているTVからは連続暴行魔事件のニュース、女アンドロイドを偏愛するオタクな評論家と生身の女の討論バトルが流れている。

女捜査官と連続暴行ロボットAIBUのストーリーでは男女の性の差違、捨てられていくAIBUの悲しさが描かれる。

吉沢明歩のメイドロイドはやはり嵌り役でこの人ならでは。デコトラギャルと違って誰にも渡さないで欲しい(とはいえ3作目は無いようだけど)
なんとマリアはセックス機能が搭載されていないので一切カラミのシーンが無いのです。
その代わり違法改造したセクサロイドT-3356・イヴちやん(吉沢明歩2役)として目いっぱいエロで登場しますのでご心配無く。
この改造セクサロイドを推薦する店員の商品説明も珍妙なる名調子ぶっ飛んでいて良い。



精密なアンドロイドが当たり前の未来にあって、女刑事友梨に情報提供するミスターXが、チェコアニメを連想するアンティークな木製人形として登場。このあたりも監督のセンスの良さが窺える。

現在、ピンク映画を撮る監督として一種別格扱いとして今後も注目していきたいです。

アンドロイドが人間に生まれ変わる事を少女が大人の女になる初潮とひっかけ、初経に相当するアンドロイドの初涙と、この劇場公開タイトルもピンク映画としては珍しく秀逸であります。

シネロマン池袋

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「アンチクライスト」

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「アンチクライスト」2009年 丁・独・仏・瑞・伊・波 監督:ラース・フォン・トリアー

愛し合っている最中に愛する息子を事故で失った夫婦。深い悲しみと自責の念からしだいに神経を病んでいく妻。セラピストの夫はそんな妻を森の中の山小屋に連れて行き治療しようと試みるが、事態は更に悪化していく。彼らが「エデン」と呼ぶ山小屋に救いを求めた現代のアダムとイブが、愛憎渦巻く葛藤の果てにたどりついた驚愕の結末とは・・・?

ラース・フォン・トリアー監督の衝撃の新作、エログロ目当てで観に行ったけど、そんな事は吹っ飛んでしまう、どえらい作品でした。

かなり難解な作品で、こういった場合、思考停止状態で考えるのではなく感じる事に専念するという手があるけど、暗喩やヒントが多く含まれ、ついつい無い頭で考えてしまう。
監督の意図、正解にはたどり着けない(正解など無いとも言える)が、ちょっと勝手な解釈をしたりして・・・無駄な抵抗。脳内ぐるんぐるん、気持ち良い。

まず、プロローグの映像の美しさに、一発で引きこまれてしまう。
夫婦のセックスの最中に子供を事故で失うという最もあってはならない悲劇を、クリアなデジタル映像で見せる。モノクロのハイスピード撮影に被さる美しいアリアの歌。息子が落下していく描写などはファンタジックとさえ言える。美しすぎはしませんか。
この美しい映像のマジックによって、観る側である私はこの妻の哀しみが、強い母性愛からくる悲嘆だと思いこんでしまう。
同様にセラピストでもある夫も思いこんで、なんとかこの妻を救おうとする。
ところが、物語が進むうちに様子がおかしくなってくる。
夫による治療が始まった頃、妻は夫に「いつもあなたは自分や息子に距離をおいていた」と訴える。ちょっとドキリとする言葉ではあるが、これを機に何か、こちらの思い込みに疑問が生じる。

妻の恐がる森、かつて論文を書くために(この完成しなかった論文の内容がかなり重要なんでしょう)息子と2人で訪れた森に入り、事態が悪化していくなか・・・妻に息子を愛する優しい母という幻影は崩れていく。
靴を左右逆に履かせてしまう妻の様子からは子供に愛情を持てない様子がうかがえる。
妻はトラウマからセックスができなくなる。という事はなく、罪悪感からタブー視しても購いきれない性欲に自らの肉体を持て余しているようだ。
悲劇的事故の回想シーンでは、妻の視線は確実に息子の危険を捉えている。息子を助けられたのに、上り詰めようとする快楽から抜け出せなかったという事か。
はたまた、この回想こそが妻の思い込みなのか・・・。



結局、セラピストは家族を治療するものではないという通説通り2人の関係は崩れ始める。そのうえ患者と性の関係を持ってはいけないというセオリーにも反して、悪化していく状況。2人が愛し合うたびにどんどん悪化していくというのはセックス自体が罰のように感じられる。悲しくも恐ろしい。

夫はあくまで、母性愛の優しい妻の悲嘆を救おうとしていて、彼女の中に本当の姿(悪魔)を見出す事が遅れる。これも彼がセラピストであったためか。そして妻の中に悪魔を見出した時、そこにはもう妻への愛なんてものは介在しない。そもそも、この夫の妻や息子に対する愛情さえも疑わしく思えてくる。妻の事なんか何も解っちゃいなかった?

沢山の暗喩やヒント、キリスト教に詳しければもっと解る事もあるのだろうか?
言葉をしゃべるキツネ、子供を産み損なうシカ、瀕死のカラス・・・3人の乞食。
中世の魔女、拷問。

いったい2人がどのような決着を付けるのかと思っていたら、これは意外とアッサリめの決着で拍子抜け。
ところがエピローグがまた印象的。再びモノクロ映像にアリアが被り、森に入ってくる大勢の女性たち。
このシーンにどういう意味があるのか、こちらは知る由もないけれど、確実に何かを感じて全身に鳥肌が立った事だけは確か。

「奇跡の海」でもそうだったけど、一瞬の落胆から感動へ。
心憎い上手さがある人だ。

「本作品は過激な描写・映像表現を含んでおり、その箇所に限り、然るべき公的機関の指導により、修正を施しております」という断りがあり、残念だが、それはまぁ、止むを得ない事だと思う。
エピローグのボカシは監督自ら施したボカシなんでしょうね。

 

シャルロット・ゲンズブールの体当たり演技は納得のカンヌ主演女優賞。

痛いシーンもある作品だけれど、性描写、暴力描写が際立って激しいとは思わないのに、それでいて、この衝撃度の高さ。
奇才(鬼才)と言われるラース・フォン・トリアー監督。その名に恥じない問題作。

ヒューマントラストシネマ有楽町

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「痴漢ドワーフ」

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「MOOSIC LAB」
「MOOSIC+TRASH-UP!!」

「痴漢ドワーフ」1972年 デンマーク 監督:ヴィダル・ラスキ ライブコメンタリー付上映

あるアパートで起こる惨劇を描いた官能バイオレンスホラー。一組の新婚夫婦が引っ越してきたあるアパート。しかし、そこは若い娘を誘拐してきては売春を強制させる悪魔の館だった。さらに、そのアパートには得体の知れない小人も住んでいて…。

デンマークのカルトなポルノ映画だそうです。7年前に日本でDVD発売されており、いまだに廃盤になっていないという奇跡的な作品。
この日はライブコメンタリー付上映という趣向で、これはちょっと、嫌な予感がしていたのですが・・・予感的中。
コメンタリーメンバーも「映画の邪魔しただけでした」と恐縮していましたが、まさにその通り。
ある程度覚悟の上でしたので・・・。
初心者には知りえない情報は提供され、鑑賞の楽しみは増えました。
一応の評価はできるとしましょう。
典型的なグラインドハウス映画で、好き者が集まってビール片手にワイワイ楽しむという見方も確かにあるとは思う。
ただ、映画の方が思いの外、名作だったために、初鑑賞の身としては残念でした。

もっと小人(トルベン・ビレ)が残虐な猟奇的殺人を犯す映画かと思っってましたけど、そのあたりは緩め。
ただ、路上でケンケンパする脚長の娘をゼンマイ仕掛けのぬいぐるみで誘拐する冒頭シーン及びぬいぐるみをバックにしたファンタジックな中に不気味さの漂うオープニング。
結局、非業の死を遂げた小人の流す血に寄り添うぬいぐるみプードルのラスト。
このオープニングとラストが特に素晴らしかった。
本編の間は小人の猟奇性はそこそこに留まっていたように思います。

それでは、本編がつまらなかったかと言うと、そうではなく・・・ポルノ映画として内容が極めて充実していたと思います。
洋ピン(昔からあまり見ない)にありがちな、あざとい喘ぎとか、おおげさな体位とかはなく、極めてシンプルなエロ表現がリアルで好ましいし、女優(男優)の質が、それ相当のレベルにあり、ヘア無修正のため、忌々しいボカシもなく、かなりポイントが高い。
新婚夫婦のスレンダー巨乳妻(アンヌ・スパロウ)のノーブラ、ピタピタセーターなんかもエロいし、本物のパツキンは綺麗。
洋ピンも悪くないなと思った次第。

質の良いポルノ映画に監督のやりたい思い入れが籠もったOPとED。そんな映画ですね。

トルベン・ビレは後に、この女優さんと結婚したものの47歳の若さでこの世を去ってしまったそうです。(コメンタリー情報)

そしてコメンタリーでも常に話題になっていました、劇伴がまたとても素晴らしいのです。
音楽担当は音響出身の方だそうです。時にリリカル、時にオカルトっぽく、カッコ良いサウンド。

顔に傷のあるアパートの女主人が元クラブ歌手で、歌も披露。息子の小人に対する優しさと厳しさが現れてます。
手入れの情報が入り、早く2階を片付けてこいと追い立てる場面に買い与えたおもちゃのパトカー。

その体躯により、これまで、どれだけ不遇で捻じ曲がった精神を育んだかを想像すると、可愛いおもちゃとのラストは泣けるほどです。(決して泣かないですけど

警察に監禁売春が発覚してお縄になるかと思いきや、警察官が被害者の夫に対して、信じられない計らいをするという、トンデモ展開まで付いてます。

とても、気に入ったこの作品。
冒頭で紹介したDVDがなんと、この4月レンタル解禁だとか。これまた奇跡的な展開。
今度はレンタルして、深夜ゆっくり鑑賞できればと思います。
DVDの方のコメンタリーでは、小人俳優のネタでくだらないダジャレが飛び出すんですって。
私、こういうダジャレは大好きなので座布団1枚!

池袋シネマロサ

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「地獄変」

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「妄執、異形の人々?」

「地獄変」1969年 東宝 監督:豊田四郎

芥川龍之介の「地獄変」の映画化。庶民が飢餓に苦しむ平安時代を舞台に、時の権力者である貴族・堀川の大殿(中村錦之助)と、地獄絵に憑かれた絵師・良秀(仲代達也)との葛藤を様式美たっぷりに描写する。火刑に処せられる最愛の娘・良香(内藤洋子)をモデルに、この世の地獄を描く父・良秀の苦悶が・・・

妄執、異形特集も芥川龍之介の文芸作品となると、その妄執ぶりが半端でなくて楽しい。
「地獄変」は中学の頃、読んでいるはずだが、全然憶えてない。大凡の内容は古典的名作短編として認識はしておりますが・・・

この映画の魅力は何と言っても中村錦之助と仲代達矢のキャラ合戦、演技合戦にありました。
特に中村錦之助の大殿様の陽気で鷹揚にはしゃぐテンションは捨てがたく、ちょっと笑ってしまう臭さではあるけど、それでいて悪趣味な貴族を表現。
この陽の大殿様と対をなすのが陰でありながら、こちらもハイテンションな演技で絵師・良秀の妄執ぶりなバカさ加減を演じる仲代達矢。こちらは何時もながらの面目躍如ぶり。

大殿様はこの世の極楽図を屏風絵として描くように命じるが、苦しんでいる民衆の世は地獄さながらであるとして地獄図を描こうとする良秀。

2人の演技の中に割って入り犠牲となるのが良秀の娘・良香(内藤洋子)
いつまでも高麗からの帰化人としての拘りに縛られている良秀を咎める言葉も。

「可愛い、可愛い」と言われる内藤洋子は今までそれほど可愛さを意識する事ができませんでしたが、初めて可憐だなぁと見惚れました。可愛いだけじゃなく、凄まじいまでの凛とした強さもあって・・・。

父と大殿様、愚かなる二人の男に対して「お二人の事ですからいづれ、このような事になると予想できました」と言って火炎の中で燃えていくシーンは見ものです。
何しろ可憐な内藤洋子がもの凄い形相で焼け溶けて行ってしまうのですから。

娘を焼き殺す事になっても、尚、行きすぎた絵への情熱、執念から解き放されない愚かなる父、良秀・・・、これぞ妄執と言わずして、何としましょう。仁王立ちして見得切ってる場合か・・・。

絵師良秀が自分の弟子を縛り上げて地獄図のモデルにするシーンでは、ぽちゃっとした弟子がホモっぽくてちょと萎えます。女の弟子は無かったので仕方ないのか・・・

シネマヴェーラ渋谷



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訃報 坂上二郎さん

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訃報 坂上二郎さん76歳=コント55号で活躍

垂れ目とちっこい目のコント55号として子供の頃からTVで親しんだ二郎さんといえば、
欽ちゃんにこれでもか、これでもかというぐらいダメ出しをくらいながら、必死に汗かき、ぜいぜい言ってるおじさん。ちょっと可愛そうなぐらいのコントの印象で、二郎さん自体が特に面白いコメディアンという記憶は無かった。
後にドラマなどで活躍するように、コメディアン萩本欽一と役者坂上二郎という印象。
あとは、今回の訃報記事でも良く取り上げられている「裏番組をぶっ飛ばせ!!」の野球拳ですね・・・

ところが最近になって観た映画でコメディアンとして坂上二郎の芸が実に面白いという事に初めて気づいた。
「喜劇 女の泣きどころ」での天光軒満月だ。
出番は極めて少ないが、終盤で美味しいところ全部持って行っちゃう面白さだった。

これまで気づかなかったのは欽ちゃんがコント55号の後に、二郎さんの代役として次々に素人を相手にいじり倒していったため、自分の中でいつの間にか、素人と二郎さんが同列になってしまうという錯覚があったためかもしれない。

コント55号、見直してみる必要がありそう。

ご冥福をお祈りいたします。

喜劇 女の泣きどころ
昭和元禄 ハレンチ節

「庭にお願い」

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「庭にお願い」2010年 Fontana Mix 監督:冨永昌敬

福岡に居を構え、東京との間を往復しながら音楽活動を続けるミュージシャン、倉地久美夫は、あまりにも独創的な歌声やメロディー、不可思議なギターの音色の音楽世界で、多くの人々を魅了する。倉地に魅了させられた男たち、元「ユリイカ」編集長須川善行と映画監督の冨永昌敬は、倉地本人にカメラを向け、また、彼をリスペクトするミュージシャンへのインタビュー、白熱のライブ、倉地のルーツに迫る貴重なアーカイブ映像などで天才ミュージシャンの知られざる実像を浮き彫りにする。

まったく伺い知らないミュージシャンのドキュメンタリー映画なんか見てどうすんの?
実はこの日、併映の短編の方がお目当て。
でも、こういう縁で知らないミュージシャンの魅力に触れ、好む音楽ジャンルが増える事もあるのでちょっと期待も持って。

なるほど独創的であり、ある種の天才ということは解った。そして、風貌なども怪しいという所がとても良い。
全く知らないと思っていたけど、NHK教育の「詩のボクシング」第2回チャンピオン。
思い出しました、この人がチャンピオンになった時、偶々「詩のボクシング」見ていたよ、確かに。
「詩のボクシング」を見たのは唯一その回のみだと思う。




シンパシーのインタビューは面白くないけど、ライブ映像もたっぷりあって、倉地さんの魅力に触れる事ができる。
特にギターの弾き方が面白い。
弾き語りよりも菊地成孔、外山明とのトリオ演奏の方に惹かれる。
フリーフォームなジャズとヴォイスのコラボ。(それにしても菊地成孔の惚れっぷりがすごい

弾き語りの怪物4 倉地久美夫 『蘇州夜曲』

倉地久美夫「サランラップの島」

kumio kurachi / "Asahi! " [Sun12 Jun '09]

倉地久美夫/Poetry Series

いっぱいリンクしちゃったけど・・・
だからと言って、滅茶苦茶気に入って、「CDなんかも買いたい!」なんては思わない。今のところ・・・

んで、「庭にお願い」って何なの?「願」反転されてるし・・・。
※彼の曲タイトルらしい。映画では歌われてなかったと思うが、聞き逃した?

池袋 シネマロサ

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東北地方太平洋沖地震

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被害がどんどん拡大しています。洒落にならない状態です。

発生時は社内。
意外とでかいが大丈夫だろうと冷静に社屋外へ避難。

今回も災害は首都圏を直撃しませんでした。
いつ来てもおかしくないはずなんですが・・・

忘れた頃にやって来るでしょうから、これでまた当分は来ないと油断しましょう。
今回は予行演習として効果的ではありました。

電話も携帯も繋がりませんでした。
社で採用している安否確認システムがまったく機能しない事が解りました。
夕方になって大量のメールが届きました。それも新着メール問い合わせをしないと入ってこない。
社内の緊急一斉メールで安否確認情報が飛び交っていました。
110番119番通報の妨げにも一役買ったことでしょう。
ツイッターが有効なようです。今後、考えてみましょう。

家族の安否確認も夕方まで取れず。
かみさんはパート先から途中まで同僚の自転車の後部チャイルドシートに乗せてもらい(入ったのか!「前じゃないよ」「あたりまえだ!」)、その後徒歩で小学校で待機しているHero-Nを迎えに行きました。
途中、警察官に何度も遭遇したけど2人乗りはお咎め無し。念のため警察官を見たら、「ママ、恐いよ」と子供の振りをしてごまかしながら。
4年生はやはり机の下にもぐって、「なかには泣いている子もいた」って。
下校前(6時限目)だったのは幸い。
ひょっとしたら一人留守番で不安がっていないか、心配でした。

我が社も早めに締めて、帰宅できるものは帰宅。
徒歩帰宅は近いので寒かったけど快適の90分。昼食を食べすぎていたのでちょうど良い運動。腹もこなれた。
Hero-Nに「長年生きていて一番大きな地震だったよ」と伝えると「おかあさんも同じ事言ってたよ」
珍しく気が合った。
家の中も被害はトイレ防臭剤が倒れ漏洩する程度。キャスター付きすきま収納棚が少し動いていた。無駄かもしれないが、対策を考えよう。
買ったばかりの液晶テレビ転倒防止策を取っていて良かった。労が報われた。

どうしてもワクワクしてしまう、ちょっぴりハイテンション。
これで、昨年老朽化して引っ越した向かい側の無人団地が倒壊でもしていたら、幸運を喜べたのに・・・震度5程度ではびくともしない。

帰宅後は災害情報のテレビに釘付け。
信じられないような光景。あまりにも痛ましい情報が次々に・・・
でも、逆に円谷の特撮ってやっぱり凄いと思ったり。
大八車などでで避難する人々の映像が加わっていれば完璧。
原発では放射性物質漏洩の危機も。
ゴジラはやはり神の存在か。

どんな時でもテレビ屋はニュース番組の効果的演出を忘れない。
東京の報道室で何故かキャスターだけヘルメット被っているのには流石に失笑。

Hero-Nの小学校も帰宅困難者の受け入れを始めた。
あんな場所に休憩、仮宿に立ち寄る人、居るんだろうか。
覗きに行きたくなる気持ちを抑えて・・

夜半すぎに、今度は長野県で震度6ですと。
太平洋沖地震との関係性は今のところ不明。

天災は忘れた頃にやってきます。
忘れなければ良いのですから、肝に銘じて毎朝「大きな地震が来ませんように」とお祈りしましょう。
首都圏直撃地震直後もお気楽記事をUPできる事を祈りましょう。

これから救助活動に当たるレスキューの皆様。いつも頭が下がる思いです。
野次馬の域を出れない野郎ですが、1人でも多くの人命が救われますよう願っています。ほんとです。

「超過激本番 失神」

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「妄執、異形の人々 ?」

「超過激本番 失神」1992年 新東宝 監督:中野貴雄

東洋の魔窟と言われる女体渦巻地帯。全裸に近い女同士のレスリングを呼び物にするキャバレー「カスバ」の経営者・蛇沼は見事な肢体を持つマリを新人レスラーとして雇い入れた。そんな時、密輸業者の玄海竜からブツ入荷の一報が入り・・・。欲情渦巻くキャバレーを舞台に、とんでもない奴らが入り乱れて巻き起こす、旧新東宝映画へのオマージュに満ちた痛快アクション・ポルノ。

べたべたのピンク映画上映タイトルですが、DVDでのタイトル(脚本タイトル)は「女体渦巻地帯」
そう、一連の新東宝、石井輝男作品へオマージュを捧げた作品て事で楽しみにしてました。

低予算のピンクでオマージュって事になると、お笑い方面に走るのが手っ取り早いんでしょう。というか、これこそ中野貴雄の真骨頂なんでしょう。
それにしてもこのギャグに乗り遅れると、なんとも寒々とした気持ちになり、チープ感覚を面白がるゆとりは生まれませんでした。
ウーム、何やってんだぁ・・・思った途端にスヤスヤと眠りに落ちてしまった。
水鳥川彩の「カスバ」での海女姿と、女ターザンばりの中村京子のキャットファイト・ショーくらいまでは意識があったんだが・・・
懐かしい中村京子の迫力アマゾネスボディは似合うなぁ。

目が覚めたら、核ミサイルをめぐってのドタバタ遊戯の最中。意味まったく判らず・・・
まぁ、仕方がない。

ところが、ラストでの怪優・山本竜二の独壇場エロ・シーンを見ていると、なんとも眠ってしまったことが悔やまれ始めた。

そういえば、石井輝男監督の「女体渦巻島」も初見の時は大爆睡かましたんでした。
後にリベンジして、その魅力を堪能したんでした。

そんなところまで真似るなんて中野貴雄、恐るべし。(個人的な事じゃんか!
果たして、この作品、リベンジ機会がありますでしょうか。なかなかレンタルにも置いてなさそうです。

シネマヴェーラ渋谷

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江戸川乱歩全集 第5巻 「押絵と旅する男」

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江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男 (光文社文庫)江戸川 乱歩光文社発売日:2005-01-12ブクログでレビューを見る»

実は江戸川乱歩は短編をいくつか読んだくらいで、意外なことにあまり読んでいないのです。
有名な話や多く映画化、ドラマ化され、内容は熟知していても原作は読んでないものが多い。
そこで、このシリーズはコンプリートする気はないのだけれど少しづつ買って読むことにしている。
ボリュウムがあるという事は次に読む本を頻繁に買いに行く必要が無い。これも好都合。
反面、完読後だと、最初の方の作品に印象が薄れてしまうけど・・・。
江戸川乱歩自身の自作解説付というのも興味深い。
また、巻頭に初版本装丁の魅惑的な写真が載っており購買欲を起こさせる。

第5巻は休筆明けで、いよいよ売文業として探偵小説を本格的に書き始める頃(ご本人は本意でなかったよう)の作品4編。
「押絵と旅する男」「蟲」「蜘蛛男」「盲獣」
どの作品も映画化されていて、私も「蜘蛛男」以外は観ている。

「押絵と旅する男」は川島透監督で鷲尾いさ子も出ていた映画の方は実相寺昭雄の「屋根裏の散歩者」との2本立てで観た。
ほとんど忘却しているが、原作を読んだ今、もう一度見直してみたい。できれば劇場で・・・。
のぞきからくりのお七に恋の病にかかる純情な兄の話はロマンチックで、汽車の中で押絵と旅する男との出会いなど、幻想世界としても美しい。
その中にもしっかり明治期の浅草の描写が残っている名作。
浅草十二階、のぞきからくり、遠眼鏡。魚津の蜃気楼・・・。
これを読むと「くっしゃみ講釈」や「幾代餅」を聴きたくなる。

「蟲」は自作解説によると、「人間の死体を蝕む極微生物との闘争を書こうとしたが失敗作である。」とおっしゃる。
確かにその観点からするとご本人は満足行かないのかもしれないけど、読者はそんな事は知ったこっちゃない。
愛する木下芙蓉の死体との闘争のドタバタ度合は十二分に満足できる世界であり、オムニバス映画「乱歩地獄」では浅野忠信が好演している。
「乱歩地獄」の中でもカネコアツシのこの作品が抜きん出ていたことを改めて認識。
蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲
蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲
蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲蟲

「蜘蛛男」は探偵小説中篇への橋渡し的な位置を占める作品だとか。
本人の意とは逆に娯楽性にかけての才が素晴らしく、怪奇趣味の味付けがありながらも幅広い層に受け入れられたのでは。
乱歩作品に明智以外の名探偵が登場すれば、それはそれは胡散臭い。
殺人を芸術として、自己顕示する蜘蛛男と明智の戦いは、明智に都合良く展開しすぎるものの痛快で一気読み。



「盲獣」は増村保造の映画が有名で、また緑魔子と船越英二の演技があまりにも鮮烈。
映画は蘭子(緑魔子)の身体が切り刻まれるところまでを描いていたが、その後日譚がこんなに長いとは知らなかった。映画はほんの序章だったのね。
しかし、増村映画の判断は大正解。
盲獣が次々に女たちを毒牙にかける部分は、それぞれに水準を満たして余りあるのは確かだけれどやはり饒舌気味。
かといって、原作のまま蘭子殺害で切ってしまうと呆気なさ過ぎる。
実際読んでいて、「え!?もう殺しちゃうんだ」と肩透かし気味。
これは増村保造・白坂依志夫の大正解で演出が際立っていることが解る。

しかし、映像を先に見たせいもあるかもしれないが、盲獣の奇怪な地下室の彫刻描写。これが映像以上に素晴らしいのです。



いづれにしてもこの時期の乱歩作品は名作揃いですね。

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